皆さんはガラスで演奏する楽器をご存知でしょうか。
真っ先に出てくるのはコップに水を入れ、濡れた指でグラスのふちをなぞって音を出すグラスハープだと思います。このグラスハープの改良版としてアルモニカ(グラス・アルモニカ)というものが1761年に誕生しました。
この楽器は音色はその自体の人々から、
「甘い音色」、「天使の声」、「天上的な声色」と比喩されるほど素晴らしいものでした。
しかしこのアルモニカは時間が立つにつれ、「悪魔の楽器」と呼ばれるようになりました。
美しい音に誘われた者が、次々と精神を病み、命を落としていったという伝説。
多くの怪奇な噂が流れたこの楽器には、一体どんな秘密があるのでしょうか?
今回は、アルモニカの起源から仕組み、そして歴史までをたどりながら、その真相に迫ります。
目次
アルモニカを生み出した天才
アルモニカを発明したのは、アメリカの政治家であり科学者でもあるベンジャミン・フランクリンです。
1751年にロンドンで「水を入れたグラスをこすって音を出す」演奏法に感銘を受けた彼は、それを改良し、より演奏しやすい形で開発しました。
完成した楽器は、大小のガラスのボウル(椀)を軸に並べ、足元のペダルを踏んで回転させ、水で濡らした指で触れて音を出すというもの。
この仕組みにより、従来のワイングラス演奏よりも幅広い音域と滑らかな旋律を奏でることが可能となったのです。その音色を聴けば、天使の声と言われる理由がすぐに分かると思います。
「悪魔の楽器」と呼ばれた理由
なぜ、そんな美しい音を奏でる楽器が「悪魔の楽器」とまで呼ばれるようになったのでしょうか?
いくつかの説を紹介します。
アルモニカの”音”が精神に異常をきたす?
アルモニカの音色は人の感情に強く訴えかけ、演奏者や聴衆の精神に影響を与えると信じられていました。
特にヨーロッパでは、「催眠作用がある」「うつ状態になる」などの噂が流れました。
鉛中毒説
当時のガラスには鉛が含まれていました。
そしてこの鉛が演奏中に指から吸収されたのではないかという説があります。
吸収された鉛によって演奏者の体調不良や幻覚を引き起こしたと言われています。
しかし、昔は治療薬として鉛が配合されていたものを服用していることも多かったのです。
なので、アルモニカの鉛が原因で鉛中毒になったと言い切ることはできません。
死者の音色?
フランスでは、「死者を呼び寄せる音」と恐れられ、教会や病院では使用禁止になることもありました。
実際に起きた事故や出来事
演奏者の突然死や精神崩壊
記録によれば、アルモニカの著名な演奏者の中には、演奏中に倒れたり、精神を病んだりした人物が複数存在します。具体的な死因が特定されているわけではありませんが、当時の人々は「アルモニカが呪われている」と信じていたようです。
使用禁止令が出された例も
さらには演奏中に子供が亡くなるという悲惨な事件までも発生してしまい、ドイツの多くの地域でアルモニカの演奏が法律で禁止された時期もありました。
アルモニカの現在
このように一時は“忌まわしい”存在とされたアルモニカですが、現在ではどうなっているのでしょうか?
実は近年、アルモニカは再評価され、復元・再現されつつあります。
幻想的で霊的な雰囲気を演出するために使われる場面が増えているのです。
かつて「死の楽器」と恐れられた音色は、今なお人々の心を揺さぶる特別な響きとして残り続けているのです。
まとめ
アルモニカは、ベンジャミン・フランクリンの発明によって誕生した、ガラス製の回転楽器。
その音色は美しい反面、人の心に強く作用し、「悪魔の楽器」と恐れられた過去を持ちます。
「音楽には人を癒す力がある」と言いますが、ときには人を惑わせ、取り込んでしまうこともあるのかもしれません。
あなたも一度、その音に耳を傾けてみてはいかがでしょうか――ただし、自己責任で。
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